岸辺 正雀 ショットバーレインフォレスト
不思議な紳士

今回は少しご年配の不思議な紳士のお客様のお話です。

以前に2回来られていたので、

「この間も来ていただきましたよね」

と聞いたのですが、

「いや、ここは初めてだ」

とおっしゃるのです。

飲むウイスキーの銘柄も飲み方も覚えていたので、

間違いはないと思うのですが、そうおっしゃるのです。

そういえば、2回目の時も、開口一番で

「ここは初めてなんだがね。」

とおっしゃったのです。

そういうシチュエーションが好きな方なのかとも思っていました。

そして、4回目のご来店の時です。

ちょうどいつも飲まれるウイスキーが出ていたので、

目の前にお出ししたのです。

さらに、

「飲み方はいつものでよろしいですか?」

と聞いてしまったのです。

今回も

「ここは初めてなんだがね。」

と言いたかったのかもしれません。

でも、僕が先に先手をうってしまいました。

お客様は、驚いた顔を見せられ、

「そういえば、以前一度だけ来た事がある。

その時の、ウイスキーを覚えていてくれて、こうして出してくれるのか。」

と少しうれしそうな表情を見せてくださいました。

さすがに「4回目ですよ」とは言いませんでしたけどね。

話もしっかりされる方なので、おそらく

僕が覚えてないことを前提にして、わざと初めてのふりをされていたのだと思います。

今回も、ショットグラスを一杯だけ空けて帰っていかれました。

そして、

「ありがとう。今日もおいしかったよ。」

とおっしゃってくださいました。

また、二回目のご来店をお待ちしております。