岸辺 正雀 ショットバーレインフォレスト
本当の正体

バーテンダーでバーの嫌いな人はいないですよね。

働くのも好きならば、他の店に飲みに行くのも好きな人がほとんどではないでしょうか。

そこで、この間来てくださった同業者(バーテンダー)の方と話が盛り上がったのですが、

バーに飲みに行って、自分の正体を明かすか明かさないか。

これが結構微妙な問題で、飲みに行く方としてはバレた時に、

「偵察にきやがったな〜」

と思われたら嫌やなぁ、と思ったり、店側としては、

「試されてんのかなぁ」

と思ったり。また逆にお客としては、

「試してると思われたら嫌やなぁ」

と心配したり。

そんな状態では、せっかくのバーでも落ち着いて飲めたものじゃないですね。

だからもう、ハッキリと明かすが明かさないかを決めなければいけません。

最初に言ってしまってバーテンダートークで華を咲かすか、

完全に違う自分を演じて、その場を楽しむか。

こんな選択をきっと他のバーテンダーさんもされてるんだろうなぁと思うのです。

今まで僕の店で正体を明かしてくれたバーテンダーさんは三人いました。

というよりも、結局はバレてしまうのですよね。

よほど違う自分としてのネタを考えていかないと、

「お仕事は飲食関係ですか?」

の誘導尋問にすんなりひっかかるハメになるのです。

たいてい、その人の雰囲気や注文の仕方で、バー関係の人かな、

というのは分かりますね。

僕も他の店に行くと、悲しいかな、

「飲食関係の方ですか?」

とつっこまれることが多いのです。

これは、嬉しいような、いや、ちっとも嬉しくないんですけどね。

そうなると、初めての店だと飲むカクテルにも気を遣ったりして。

本当は、“ギムレット”や“X.Y.Z.”なんかのカクテルを試したいのですが、

ウイスキーの水割りくらいしか注文しなくなるのです。

実は今度、勉強がてらに梅田にある有名なバーに行こうと思ってます。

その時の僕の職業は、ホテルマンです。

はい、今回の格式の高いバーでは正体は頑張って隠すつもりです。

分かっても誘導尋問しないで下さいね。よろしくお願いします。