岸辺 正雀 ショットバーレインフォレスト
優しい音

いつも仕事帰りの遅い時間に寄ってくださる、

20代半ばのお客様がいらっしゃいます。

女の子と来店されても、いつも聞き役にまわる優しそうな方です。

先日、そのお客様が久しぶりにお一人でご来店されました。

音楽が好きで、ずっと楽器屋さんで働いているのだそうです。

メジャーデビューを目指すバンド活動に力を入れるというよりも、

音楽自体が本当に好きで、音楽の本質を追求している、

そんな感じの話をしてくれました。

例えば、同じ楽器で同じように演奏しても、

その楽器を使う人によって音が違うというのです。

電話口で、ギターを弾いているのを聴いていた人が、

「あ、今誰々の音に変わった」と分かるくらいなのだそうです。

音楽にうとい僕にとっては目からうろこの話ばかりでした。

どんな世界でも、追求すると深いんだな、と思い知らされました。

そして印象に残ったのが、

「やっぱりね、優しい人は優しい音が出せるんですよ。」

という言葉でした。

カクテルなんかもそうだと思います。

違うお店で飲めば、微妙に味が違うように。

何度練習したカクテルでも、

最後の最後にはそれを作った本人の味が出るのだと思います。

そのお客様は、きっと優しい音を出されるのだろうな、と思いました。

僕も“優しい味のカクテル”が作れるようになりたいと思いました。