お昼のカフェでアルバイトをしている女性のお客様がいます。
その方が働きだした頃に感じた不満を語ってくれました。
僕がいいなと思ったのは単なる不満ではなかったからです。
それは、そのお店のお客さまを想っての不満でした。
そのお店では料理を出すのが遅いのだそうです。
お客さまに何度催促されても早くなりません。
文句を言われるのはアルバイトの彼女です。
ただ、料理が早く出てこないのはもう仕方ありません。
料理を作っているのはその店の店長であって、
そのスピードも店長の考え方次第なのです。
何か理由があって遅くなっているのかも知れません。
それをアルバイト君が変えることは難しいと思います。
そんな状況になった時、その人の力量が問われると思います。
お客様を怒らせてるのは店長や、と責任を放棄することもできます。
どうせアルバイトやし、とクサってしまうこともできます。
でも彼女は投げ出したり、ふて腐れたりしませんでした。
『人を変えることはできない。変えられるのは自分だけだ。』
そんな言葉が頭をよぎったと彼女は話してくれました。
彼女はどうしたか。
まず、お客さまがなぜ文句を言うのか。
それは料理の出てくるのが遅いからです。
ではどうすればいいか。
料理を早く出すことはもはや出来ません。
ではどうすればお客さまの怒りを少しでも抑えることができるのか。
それを考えることにしました。
料理の状況をお伝えすること。
退屈しないように頻繁に話しかけること。
まずはその二つを心がけました。
それだけでお客さまの待っている時の心境も違います。
その会話が楽しければ料理なんて全然出てこなくていいかもしれません。
この発想の転換はすばらしいな、と思いました。
店長を説得して早く料理を作るようにさせる。
それは簡単そうで大変なことです。
『馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない。』
これも有名なことわざです。
いくらお客様が急いでいる状況を伝えても、
店長のスピードを上げさせることはできないのです。
本人が気づいて変わるしかありません。
だから彼女自身が考え方を変えたのです。
最後に彼女がボソッとこう言いました。
「手品でも覚えようかな(笑)」
出来ることなら、こんな人と一緒に仕事をしたいものですね。
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