岸辺 正雀 ショットバーレインフォレスト
相性

ずっと以前、ある女性と電車に乗っていた時のことです。

僕達が座っている前に、一人のおばあさんが立ちました。

僕はおばあさんに席を譲り、座っている彼女の前に立ちました。

同じシチュエーションが、今の彼女の時にもありました。

僕はまたおばあさんに席を譲るために立ちあがりました。

すると、一緒に座っていた彼女も席を立ったのです。

おばあさんは一人なので二人とも立つ必要はありません。

彼女は、僕だけ立たせるのは気の毒だと思い、一緒に立ってくれたのです。

込んでいたので、空いた席は他の人が座り、

おばあさんに気を遣わせないように少し移動しました。

話は変わりますが、先日、結婚した友人のお嫁さんに、

彼と結婚することを決めた理由を聞きました。

すると、こんな答えが返ってきました。

海外でタクシーを待っていた時のことです。

しばらくして自分達の前にタクシーが停まりました。

そばには、少し前からタクシーを待っていた人がいました。

そこで、彼はこう言ったそうです。

「あの人達は、僕らよりも先にタクシーを待っていたので、

彼らが先だよ。」

そして、先にいた人達にタクシーを譲りました。

これを見た彼女は、

「自分以外の人にも優しくできる人がいい。」

と、結婚を決めたそうです。

彼も流石ですが、その優しさに惚れた彼女も流石です。

例えばその場面で、彼の話も聞かずにそそくさとタクシーに乗り込んだり、

「なんで?自分らの前に停まったんだからいいじゃん。」

と言ってしまうと、今度は彼に選んでもらえないのです。

気が合うというのはこういうことです。

好きな食べ物が同じだったり、趣味が同じというのも共通点です。

それよりも大事な共通点が、この気が合うという感覚だと思うのです。

彼が優しいのは彼女が優しいからなのです。